キャロリング 有川浩著
残念ながらこの幻冬舎文庫には解説がない。たいてい小説を読む前に解説を読んでから作品に挑む私にとって手引きが無いまま読み始めることになった。
有川は最初ライトノベル作家で活躍し、その後一般小説を書き始めている。そのせいだろうか、読者にとって読みやすく軽めの文体だ。
冒頭の入りが良い。小説のどの場面が描かれているのか。なんだこれは!事件の匂いが・・・
演劇集団キャラメルボックスとのコラボから生まれた作品だということだが、有川の作品は映像化、舞台化、ドラマ化しやすいストーリーの面白さがある。
俊介の父のDVから始まり、破れた恋、航平の両親の離婚、反社会的集団の内側等々が描かれているのに作品には暗さがない。物語の中にどんどん引き込まれていく楽しさ、エッ!と驚かされるようなどんでん返しもある。最後まで飽きることなく読み進むことができた。
大和俊介の哀しい生い立ち。心の拠り所であった母が父との復縁。家庭内DVが日常的でも母がすがるのは父であるのはかなしい。母の親友である英代が終始、俊介を見舞ってくれるのはありがたい。同僚で元恋人の柊子の経験してきた家庭の有り様と大きく違う成長を遂げてしまった俊介は分かり合えることがないまま二人は別れていくのか。
倒産が決まった子供服メーカーが運営していた児童預かり所に最後まで通学していた小学生の航平の両親は航平が望まない離婚をしてしまうのか。
物語の盛り上がりはクリスマス前の一週間ほど前から始まりイブには終わる。怒涛の波に読者は巻き込まれていく。
あー面白かった!拍手喝采。