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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

寡欲都市TOKYO 原田曜平著

”若者の地方移住と新しい地方創生” の副題が付けられているが、最後の数ページにまとめのような形で著者の考えが書かれているだけ。副題が付けられている割にほとんど触れられていないのは残念である。

二流都市となってしまったTOKYOが日本の若者、海外(主にアジア)の若者を惹きつけているのはなぜか。物価の安さ、安全な街、公共交通機関の発達、食文化の豊かさ、エンターテーメントの多さと言ったことが挙げられている。

現在のニューヨーク、ロンドン、パリといった名だたる都市の物価は著しく高い。これは今に始まったことではなく私が欧米を旅していた時期(30年以上も前)も海外の主要都市の物価は高かった。それに比較すると東京は住宅費は高いもののそれ以外はそうではない。高いもの、安いもののどちらでも選択肢が多い。住宅費も安く済ませようと思えばそれなりに見つけることは可能であり、世界の大都市のように居住地域によって治安が危うくなるというほどではない。

「チルい」なんなのこの言葉は?とググってみれば、2021年話題の新語だという。若者言葉として定着しているようだ。「まったりしている」といった意味になる。東京は今やチルい街なのだそうだ。上昇志向でなく、競争を好まぬ日本、世界の若者から注目されているらしい。

中国で若者が「寝そべり族」になっていると騒がれているが、どこの国も経済が安定してくると過酷な競争社会から距離を置こうとする人々が増えてくる。欧米も日本も既にそうなっており、近年注目を浴びているのが北欧の暮らしである。私も自分の店に「LAGOM」と名付け、「ほどよく、ちょうどよい」を目指しているのだから若者の行動を否定もできないが。

ただ、私の場合は60歳を過ぎて生きる方向を決めたのであり若者が既に諦観した生き方を選ぶのには抵抗がある。その場がTOKYOである事も。

世界の若者がTOKYOを目指すのは構わないし、チルい生き方を否定するつもりもない。しかし、数十年後に若者ではなくなった人々がTOKYOで暮らし続けて何を見るのであろうか。老いてもTOKYOは住みよい街であり続けるのだろうか。

日本が一流を目指すのをやめても構わないのだがユルユルとした生活の中で手に入れるものは何か。重い課題を背負ったのはチルい若者達だ。