南鳥島特別航路 池澤夏樹著
雑誌「旅」に連載された12編の中の”南鳥島特別航路”を読んだ。
この島は太平洋プレート上にある日本で唯一の陸地である。沈降する火山島の上に造られた珊瑚礁で、元は環礁だったものが水没して現在の地形になった。面積1.51㎢、海岸線長6km、最高標高9mという小さな島である。(島についての詳細はウィキペディア参照)
島へ向かうまでの海路での旅の様子が、目で匂いで想像できる文章が連なる。那覇に飛行機で降り立った時の身体にまとわりつくよいうな湿気を含んだ暑さと磯の香りが蘇ってきた。
新井所長の気象観測船での苦労話が興味深い。気象観測データが必要な場所に島がない場合は、船を持って行ってそこを拠点に観測をする。どんなに悪天候になってもその場を動くことができず何ヶ月もそこを動かない。船が50度以上傾いた経験もあるという。今では技術が発達して海洋ブイからデータが送信される。
執筆されて30年近くもすぎ島の様子も多少変化した。現在は気象庁職員、海上自衛隊南鳥島航空派遣隊、関東地方整備局特定離島港湾事務所南鳥島港湾保全管理所の職員20名強が交代で常駐している。
また、ロランC局はGPSの普及でロランを使用する船舶が減少したため2009年に廃止されている。
気象観測の分野では現在、地上気象観測、高層気象観測、大気バックグラウンド汚染観測、日射放射観測、遠地津波観測が行われている。
南鳥島の現在の業務については気象庁、東京都のHPから知ることができる。