京都下鴨なぞとき写真帖 柏井壽著
著者が多才だというのは経歴を読んで知ってはいたが、小説もなかなかのものである。文学作品としてなかなか、というではなく、京都案内を巧みに取り入れこなれたコラムとして秀逸である。
案内にまつわるコラムは大原、千本鳥居、北野天満宮、円山公園、糺の森の五ヶ所である。有名な観光地で訪れた人も多いであろうから情景が想像できて一層面白いかもしれない。
この私も京都が好きで入手する観光案内本はたいてい歩く観光地図であった。そのおかげもあり、描かれている場所が蘇る。内容はちょっとした謎解きを含んだ退屈しない2時間ドラマのような美味しいお店案内である。コロナ禍でなければ、この内容を参考にして京都観光を楽しめるのに残念である。
京都下鴨茶寮の代表となっている小山薫堂がモデルではないかとも言われている。代表ではあるが婿ではなく女将に気に入られて下鴨茶寮を購入したとかしないとか。真実はよくわからないが。