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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

みんなでつくる”暮らし日本一” 木田悟史著

『「鳥取県×日本財団共同プロジェクト」から学ぶまちづくりのヒント』という副題がつけられている。

2016年から2022年にかけて行われた、鳥取県と日本財団との共同プロジェクトに日本財団の鳥取事務所所長として関わった著者の記録である。

鳥取県は全国で一番人口が少なく何だかパッとしない地味な県と印象を持っている人が多いことと思う。私もこれまでそんな印象を持っていた。

だが事実は少し違っていた。例えば生活保護受給世帯数は全国で5番目の低さ。所得水準は「2019年度全国家計構造調査」によれば全国で24位、人口一万人当たりの医師数は全国7位等々と悲観するような数字ではないのである。

プロジェクトの事例が8つ紹介されている。いくつか紹介しよう。

「UDタクシー」の導入。UDとはUniversal Design(ユニバーサルデザイン)の略で誰にでも使いやすいデザインになっていることである。UDタクシーは駅や大型施設前のタクシー乗り場に停車していたりして、一般の人、健常者も今までのタクシー同様に同料金で普通に乗れるものである。従来のタクシーのセダンタイプと違い、ワンボックスタイプでドアが左右に動くスライド式、乗降口に手すりや足をかけられるステップがついていることなどが特徴で車椅子の人でも車椅子に乗ったまま乗車できるようになっている。鳥取では200台導入され、その成果として「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」を受賞している。鳥取では「UD TAXI」と大きくペイントされた「黄色」タクシーが走っている。導入された当時は街中を走っている姿がとても目立っていたのだが、今ではそれが普通のものとなっている。

智頭町の話。鳥取県智頭町は鳥取市から30キロほど中国山脈を分け入った山間地で、1000メートル級の山々に囲まれ、町の93%が山林で閉められている。

智頭には日本でも五指に入る山林王の石谷家がある。この立派な石谷邸の一般公開が始まった。当時の町長が石谷家に日参し当主の妻の信頼を勝ち取り、建物を街に寄贈してもらいこれが智頭町の大きな観光資産となった。さらに町の中心から北東約四キロの山間部にある板井原集落。限界集落と呼ばれているのだが、廃屋になっていたところなどに手を加え、山村の原風景を甦らせ観光客を呼び寄せることができた。「森のようちえん」は大自然の中で子供たちをのびのび育てる無認可保育園。NHKなどで大きく取り上げられ移住者が増え、この取り組みが全国に広がっている。自然の中での子育てに関心を持った人々の智頭町への移住も増加している。天然酵母パンをつくる「タルマーリー」も智頭町で酵母ビールを提供するようになった。今年5月にはフランス人パティシエが作るフランス菓子の店も開店した。

まだまだ紹介したい活動も多いが、詳細はこの報告書を読んで欲しい。ここで紹介したいくつかは帰省するたびに何か変わったなぁと見てきたが、このようなプロジェクトが進行していたとは知らなかった。これからも少しづつ暮らしやすい町になっていくように協力したい。