なぜ、日本人は横綱になれないのか 舞の海秀平著
大相撲が面白い。興味を持つようになったのはNHKのラジオ中継を聴くようになってからだ。ラジオから流れてくる実況中継を聞きながら取組みの様子を想像していた。大相撲中継をテレビで見始め名前と顔が一致するようになり、目に鮮やかな廻しにも驚いた。黒の廻ししか記憶になかったのだ。よく見れば力士の浴衣もユニークであった。
力士のサポーター姿もとても目立つ。巻いていない力士の数の方が少ないのでは。サポーターを巻かないと取組みができないほどの満身創痍者が多いということか。体を張っているのだから怪我も多いだろうが厳しい世界である。
舞の海秀平と北の富士のNHK解説が面白い。以前は北の富士の辛口の解説が苦手だった。しかしその辛口が面白く、相撲コラムさえ読むようになってしまった。
本は2015年発行なので内容は少し古く現役大相撲力士への評はあまりない。舞の海の相撲人生と彼の相撲に寄せる熱い思いがよくわかる。
日本人横綱が生まれないのは、ハングリー精神の喪失だ、との筆者の評だが同感である。誰よりも強くなり多くのお金を稼ぎたいといった意識が育たない日本になってしまったのだと思う。金銭の話をすることが卑しい、といった世間の意識が今もまだ変わっていないように思う。
現役時代の貴乃花について記述されている箇所がある。私は醜聞ばかりが取り上げられていた時の記憶が鮮明で現役時代を知らないが、「強かった」「品格のある相撲だった」とある。力士引退後の騒動で貴乃花の力士としての偉大な姿が消散してしまっているのを残念に思う。
先日の名古屋場所は散々なものであったが、その中の照ノ富士と若元春の「待った」に関して放った舞の海の言葉。「行事の大失態、昔なら切腹もの」というような厳しいコメントをきちんと言葉にする相撲解説を今後も期待する。