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BOOK CAFE LAGOM

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鳥取市行徳3-757

本の紹介

いま君に伝えたいお金の話 村上世彰著

村上世彰の名前を見て気づいた人も多いだろう。2006年の村上ファンド事件の当事者である。これはニッポン放送株を大量に購入するという堀江貴文が率いるライブドアの決定を知った上で、ニッポン放送の株が高騰すると共に売却した事件(インサイダー取引)である。判決は懲役2年、執行猶予3年、罰金300万円、追徴金約11億4900万円。

ライブドアはライブドア事件が起こっている。2004年9月期年度の決算報告書として提出された有価証券報告書に虚偽の内容を掲載したとする疑いが持たれるなど証券取引等に違反したとされる2つの罪で、法人としてのライブドアとライブドアマーケティングおよび同社の当時取締役らが起訴された事件。

当時世間をずいぶん騒がしていた事を思い出す。騒がしていたというより世間が勝手に騒いでいた、というべきかもしれない。とにかく村上は異色であったのだと思う。2011年の最高裁の判決後裁判長が「利益至上主義はビジネスと言えどもやり過ぎではないか」と発言したのに対して「ビジネスは安く買って高く売るもの。その考えは間違っている」と反論したという。裁判長はお金に関して日本人的発想を持ち、村上がそうでなかったというに過ぎないが、日本人の多くは今でもお金は汚いもの、お金のことについて熱心に考えることを厭う体質だと思う。

2018年にこの本は上梓されている。「貯金から投資へ」を初めて政府方針に掲げたのは小泉政権である。それから20年余り経つが個人金融資産の約半分を占める預貯金の比率はほとんど変わっていない。ちなみに高校の授業では今春から金融教育が必修となった。日本人の金融リテラシーがあまりにも貧困すぎ、欧米の多くの国並みに自身の将来設計は自分ですることを政府が本気で求めて始めた結果かもしれない。

今回紹介した本は子ども向けに書かれているが、金融教育が必要なのは大人の方だろう。金融リテラシー調査での全国平均が55.7%の数字は自慢できるものではなく生活のために知識として金融知識がないと自分の身は守れなくなってしまう。

もはや「会社員は気楽な稼業ではない」のだそうだ。世界を見渡すと日本の他に学校を卒業して会社に就職し、同じ会社で定年まで働き続けるといった終身雇用の会社員はほとんどないのだそうだ。日本の会社も欧米のように、能力や成果によって給料を決める方向にシフトしてきている。

年金生活者目前の私はいかにお金と付き合っていくのか還暦を過ぎてより真剣に学習していかなくてはならなくなった。