カフェ、はじめます 岸本葉子著
エッセイストの岸本葉子が小説を書くのか、と興味津々で読み始めた。彼女の住んでいる吉祥寺を舞台にしているような小説の背景である。作品はさほど面白くなく中途半端な終わり方をしている。読者として書かれていないストーリーを想像すれば、睦子は多分遠くないうちに亡くなり、娘の兼代はいさみに貸した家を売ることを決意する。そして開店したものの客足の鈍い「おむすびカフェ さんかく」は開店資金が途切れたということで兼代の提案を受け入れるだろう。
小説の内容は期待外れであったが、カフェを開業する前後の話はとても参考になる。昨年店を開業する前に知りたかった内容の多くが書かれている。これから起業を計画している人がいれば参考になるに違いない。カフェ開業に関する詳細を記したマニュアルはほとんどなく、集客に必要な事柄も詳しいものはない。これは現実世界でもあり得ること、といった描写は枚挙にいとまがない。