東大教授が考えるあたらしい教養 藤垣裕子、柳川範之著
教養を身に付けたいと考える人は多いが、果たして教養とは何か。
今の日本人の一般的な教養観を簡潔に表すと、「教養を高める=知識量を拡大する」だろう。教養を「量」により比較可能なものと考えている。比較可能だと考えるから「より多くの知識を身につけよう」という競争に走ってしまうのではないか。いま求められているのは情報や知識の量ではなく、課題の解決法や課題の背景にあるものを考え抜く力である。
知識量の重要性を低下させている要因は昨今の技術革新である。インターネットやスマートフォンの発達により容易に多くの情報にアクセスできるようになった。しかし、必要なのは情報量の多さではなく、「情報を選別する力」や「情報を結びつけて活用する力」「情報をもとに考える力」である。これらの力が現在に求められる「教養」だと著者は考えている。
正解のない問いに対して意見の異なる他者との議論を通して思考を柔軟にし、「自分がより良いと考える答え」にたどり着くこと。以下が作者の提唱する教養が身につく習慣である。
・「情報を選別しない」という選択もある
・思考を組み立てるために「しゃべる」
・異分野に関心を持ち、引き出しを増やす
・「話すこと」で知識を整理する
・「どちらが正しいか」を競わない
・本は「疑いながら読む」
・意識的に視点を切り替える