コンビニ人間 村田沙耶香(ムラタ サヤカ)著
こんな人がいるのか、と思うもののこれは小説だからと言い聞かせて読み始め、あっという間に読み終えた。芥川賞作品なので難解かも、と緊張しながら読み始めたが、さにあらず。
「白羽さん」なんて嫌な男だろうと思いはするが、矛盾の多い言動にそれなりの真実はある。しかし白羽さんのような男は嫌われる。同居を提案した恵子がどんな暮らしを始めるだろうと興味津々の私はその恵子の言動に驚かされる。この小説全体に通じる淡白さをこの同居場面で改めて印象付けられ、恵子の周囲を取り巻く一般の人と私も同じだなぁ、と思うのだった。
自分が納得できない生き方をしている人を肯定するために勝手にドラマを作っていたのは私も同様であった。どんなに探っても理解できないものの前で人のやることはこんなものなんだろう。
著者へのインタビュー記事等をいくつか読んでみた。唐突に出来上がった登場人物ではなく作者の生き方、考え方が十分に反映されていてここでもまた驚いている。著者のその他の作品に手を伸ばしたいような、しかし素直に面白いと言えない私がいる。