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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

デンジャラス 桐野夏生(キリノ ナツオ)著

 神奈川近代文学館で谷崎の特別展を見た記憶がある。そこで三番目の妻「松子」最初の妻の妹「せい子」が谷崎の小説に描かれていることについては読んだのだが、「千萬子」については知らなかった。ましてや重子が関わってくるとは。ただ重子については「デンジャラス」の中で描かれていることがどこまで真実かわからないのではあるけれど。

 谷崎の三度目の妻である松子の妹「重子」がデンジャラスの語り手となっている。重子は「細雪」で登場する「雪子」である。「細雪」は好きな小説であった。何度か映画化されていて私は1983年版の雪子(吉永小百合)が印象深い。NHKで「平成細雪」(2018)が放映されたが、これも同様に興味深い作品であった。

 谷崎の私生活を題材として多くの作品が発表されてきたのだが、これら小説の多くは圧倒的な美を放っている。好き嫌いが大きく別れそうな作品ばかりであるが私はとても惹かれている。谷崎を取り巻く魅力的な女性たちがいたからこそ耽美な作品が生まれたのであろう。

 松子、重子、千萬子の力関係が谷崎の執筆する作品を巡って変化していくのだが、重子が千萬子を谷崎から離す行為がなければ、死に至るまでにまだ幾つかの小説が発表されていたのかもしれない。事実を基にしたフィクションである、と著者は言っているのだから、もし重子がなどと考えるのはお門違いなのだろうけれど。

 一人の男を軸にして微妙な均衡を保ちながらの日々の暮らしは部外者から見れば息苦しい。私は谷崎が嫌った妙子のようにさっさと家から出ていっただろう。