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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

捨てない生きかた 五木 寛之(イツキ ヒロユキ)著

 断捨離ブームの中、この本を書くのは勇気がいった、と著者は言う。そうであろう、この本を発刊したと聞いて私も今頃なぜ?私がひたすら断捨離に走っているのを苦々しく思っている家人が我が意を得たりと喜ぶ姿が目に浮かぶ。ところが本の中身は単純ではなかった。

 第五章「失われつつある、町の記憶」、第六章「この国が捨ててきたもの」は深く考えさせられるものであった。

 平成の大合併で多くの町の名前が消えた。それ以前から町名変更は頻繁であった。その度に街の歴史は消えていった。かつてここがどんな町であったのかを示す名前。現在つけられているのは記憶から捨てられ平面的で薄っぺらになったしまった簡素な地名。

 「訛は国の手形」という言葉がある。話している言葉を聞けばその人がどこの出身かがわかったものだが、昨今はそれがなくなってしまった。きれいな標準語が地方でも飛び交ったいる。私自身40年近く生家を離れていて昔使っていた言葉が容易に出てこなくなった。これではいかん、と常に思う。土地の言葉が使えないなんて情けない。捨てたつもりはないのだけれど。