堤中納言物語 坂田靖子(サカタ ヤスコ)著 マンガ日本の古典7
日本最古の短編物語集である。漫画であるから理解しやすいと思っていたが、意外に容易ではなかった。
思はぬ方にとまりする少将、よしなしごと、冬ごもる(断章)は説明文が多い。漫画では描ききれぬからであろうか。あとがきの前の章に「おまけ解(ほどき)中納言物語」がある。この項では平安時代の貴族の生活、慣習について解説されているので参考となる。この解説がなければこの物語の理解は困難かもしれない。作者不詳であるのだが男の書き手であったように私には思われる。女の書き手であれば男に頼って生きていかねばならぬことへの心情が書き込まれていただろうと思うのだ。
漫画化されることでよく理解できたことは、貴族の邸宅、火取り香炉の使用法、着物が寝具代わりとなること等々。
”古典も平安時代も不案内”とあとがきには書かれているがずいぶん謙遜している。平成九年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞しているだけのことはある。