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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

老害の人 内館牧子(ウチダテマキコ)著

 2022年10月発刊。コロナ渦での書き下ろしなので、ついこの間までのコロナ時の様子も描かれている。小説の滑り出しは悪く前に進まない。老い、介護等の話題の本を立て続けに読んでいるせいかもしれない。とはいえ物語が展開するにつれ読書スピードも全開となり一気に読み通すことができた。

 アルアルの老人の回顧話。会話世代が違うと「老害」と一括りにされるが本人たちからすれば決してそんなことはないのだろう。若者と違い先がない高齢者がいかに元気に生きていくのか切実である。私も後10年もすればここに描かれている老人たちのように老害を振り撒くようになるのかもしれない。日々生きる目的がなく、なんとなく生きている状態だけには陥りたくない。家族、社会に迷惑をかけないように小さくなって暮らすのはごめんだが、生かされているだけの日常生活は避けたい。福太郎やサキのように力強すぎる老人にはなりたくはないが、老害と言われない程度の会話は心がけたい。

 後半に孫の描写が続くが、私も姪の子どもに触れて、その存在が言い尽くし難いほどの喜びになることを実感している。柔らかな肌、ぷよぷよと膨らみのある腕や足。見ているだけで気持ちが緩くなる。

 長寿社会となった今、老いの時間を迎えるのがこんなに悩ましいとは想像もしなかった。