芦屋山手お道具迎賓館 高殿 円(たかどの まどか)著
「上流階級 富久丸百貨店外商部」が2015年にテレビドラマ化され、それから著者に注目するようになった。
今回紹介する本は月刊誌「なごみ」に連載されたものを単行本化するにあたり加筆修正されたものだ。「マボロシの茶道具図鑑」(依田徹著)を参考文献としている。
本能寺の変で焼失したとされる12のお道具を付喪神として登場させた骨董ファンタジーである。茶道で使われるお道具類に興味のある人は必見だ。付喪神(つくもがみ)シリーズと言えば私は畠中恵が思い浮かぶ。付喪神の登場する彼女の小説をいくつも読んでいたのでこの骨董ファンタジーにもすんなり入っていけた。そしてこれら付喪神たちの関わったお上(織田信長)の茶道具についても知ることができた。
2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」でもお道具は何度も登場した。松永久秀が死に際して運命を共にした「古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)」の回は印象に残っている。
第7章「シロさんと本能寺同窓会」は面白い。現在の本能寺は秀吉による区画整理のため、元あった場所から少し離れた場所になってしまっている。”本能寺の変”前日のお茶会というのかお道具の自慢大会の話が興味深い。
道具は使ってナンボのものではあるが、これら茶道具を我が物とするために大層な駆け引きがめぐらされた時代もあったのだ。私は我が物にしようと思わないが、かつて多くの茶人を虜にした美しい道具たちに会ってみたい。