真珠とダイヤモンド(上下巻) 桐野 夏生(キリノ ナツオ)著
この本を手にした時はこの厚さを読み切れるだろうか、の不安の方が大きかった。ところが二晩で読み終え、さすが桐野夏生と喝采を送りたくなった。一気に読ませる筆力があるのは直木賞作家たる所以か。
バブル時期に証券会社で働き始めた若者たちが時流に飲み込まれてしまった。NTT株は1985年に160万円の初値後、2年あまりで318万円に高騰。当時の証券会社での狂騒がよく描かれている。バブル全盛期に日本が沸きに湧きお金に縁のない私でさえお祭り騒ぎを横目で見ていたことを思い出す。
しかし所詮バブルであったのだからあっという間に消えて無くなる。証券会社で違法と知りながら株を売り続けた野心家の若者は薄汚れた真珠と派手に散ってしまった。輝かないダイヤモンドは30年余り後にまるでマッチ売りの少女のように事切れてしまった。
やるせない結末を迎えるだろうと想像していたが、俗っぽいストーリーであったのは現代と違いわかりやすい世の中であったからなのかもしれない。結末は悲劇ではあっても単純な欲望に一直線で走り切れた時代であった。この小説と関係はないが当時流行った「24時間戦えますか」のヒット曲も懐かしい。