九十八歳。戦いやまず日は暮れず 左藤 愛子(サトウ アイコ)著
「九十歳。何がめでたい」「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」この2冊のベストセラーを原作に映画化が決まった。「九十歳。何がめでたい」のタイトルで2024年6月21日に全国で公開予定。九十歳の草笛光子主演。
著者の作品は数多いのだが読んだのは初めてだ。痛快な書き振りに溜飲を下げる人は数多いのだろうと想像する。”小さなマスク”、”釈然としない話”と観察の視点が面白い。「小さなマスク」は元総理の安倍氏が在任中着けていたアベノマスクのことだ。他の閣僚は顎と頰まで包み込んだ、たっぷりとしたマスクを着けているのに安倍氏だけマスクから顎が出ている小さなマスクを着けている。著者は首相の孤独を象徴している、と感じていたらしい。
「釈然といない話」は森喜朗元総理の「女性が多いと会議の進行に時間がかかる」の発言のことで、これが女性蔑視に繋がると大騒動になった事件だ。森氏は思っただけのことをそう言ったに過ぎないのに、したり顔のメディアが権威を振りかざすように一瞬のうちに森氏は追われた。世間の応対は果たして正しいのか。著者のモヤモヤとする思いには同意できる。百歳近いのに社会に対する当たり前の怒りが沸々と湧き上がっているのに驚嘆する。
2021年に刊行されたこのエッセイの最後には「みなさん、さようなら。ご機嫌よう。ご挨拶して罷り去ります。」だったが、やはり最後にはならなかった。「思い出の屑籠」が百歳の最新刊で”これでおしまい!”