光源氏と女君たち 石村 きみ子(いしむら きみこ)著
源氏物語を読み始めたのは何年前からだったろう。長年にわたって読み続けている。「源氏物語千年紀」(2008)以降多くの作家が源氏物語を翻訳し出版してきた。私は原文は一部しか読んでいない。20年以上も前に源氏物語を読む有志の会が定期的に開催されていて、その折に原文に触れた程度で大半は翻訳を読んだだけだ。数多くの作家の翻訳に触れることができたのは幸いである。
著者は作家でも研究者でもなくフリー出版者である。主要参考資料は多くない。にも関わらずこれほどの考察ができるのかと驚かされる。
”十人十色の終活”の副題がつけられており、光源氏、桐壺帝、弘徽殿女御、藤壺、空蝉、六条御息所、末摘花、玉鬘、朧月夜、紫の上、花散里、明石の君、女三の宮、頭中将、大宮、夕顔、葵の上、柏木という光源氏に関わる人たちについて(42帖「雲隠」まで)考察されている。
源氏物語の構成は三部に分けられる。第一部「桐壺」から「藤裏葉」まで。第二部「若菜上」から「雲隠」まで。第三部「匂宮」から「夢浮橋」。一部と二部で光源氏の一生が語られ、三部は彼の子と孫の話である。
光源氏の一生を三つに分けると、生誕から青年期、壮年期、初老から老後となる。源氏物語といえば光源氏のプレーボーイぶりばかりがクローズアップされるが、それだけではなく”老い”の真理にまで切り込まれている。大河小説とも言える源氏物語の面白さはこの長きに渡る人々の成長を読んでこそ、であろう。長い物語ではあるが読めば源氏物語が千年以上に渡って世界にさえも認められている理由がわかることだろう。