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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

おちくぼ物語 田辺聖子(たなべ せいこ)著

 落窪物語は中古(主に平安時代)の大衆小説だが、正確な年代も作者も不明である。話の内容はシンデレラ物語だ。

 シンデレラというと日本ではフランスの童話作家のシャルル・ペローの作品が有名である。ただ、物語の原型はもっと古く、世界中に分布していたようだ。最も古いものが古代エジプト時代の「ロドピスの靴」で紀元前5〜6世紀には存在していた。

 作者は原作の骨格を踏まえなるべく楽しい読み物として書いたという。原作の主人公の悪どい迫害ぶりは近代人の感性ではついていけないので書き改めた、とあとがきにはある。原作を読んでいないのでどれほどの違いがあるのか不明だが、作者の書いた物語は十分楽しむことができた。

 作者のあとがきにも書かれているが、当時は一夫一婦制でもなく、相思相愛の結婚などあるはずもなかったであろうに、作者の創作意図はどこにあったのであろう。

 NHK大河で平安時代が舞台になり、これまで映像化されることがあまりなかった当時の文化、暮らしなど理解できていなかった事柄に”ガッテン”と言えるようになったのは幸いである。