トンネルの森 1945 角野栄子(かどの えいこ)著
「魔女の宅急便」の著者が、自らの戦争体験を書いたものである。
戦争体験の小説、映画はこれまで幾つも読んで、見ている。過去の話で再び起こらないものだと信じていた。ところがどうだ、全世界の人々が戦争は悲惨だ、人を殺してはいけないと当たり前のように叫んでいたにも関わらず、いとも簡単に戦争はあちこちで始まり収束さえ見えない。日本が戦争をしているのではないのに他人事とは思えず、いつ火の粉が降りかかってくるかもわからない。
職場の同僚だった年配の女性は疎開を経験していた。主人公のイコと同じような環境に身を置いていたのだろう。田舎っ子に虐められた話、疎開など二度としたくないと語っていたのを思い出した。同じ年代を生きていても都会と田舎暮らしとでは体験が大きく違っている。田舎に育った両親からはイコが体験したような肉親の死や飢えの話は聞いていなかった。
人生百年時代になってきているが、戦争も災害も体験せぬまま残りの人生を過ごすことができればありがたい。この先平穏な日々が続くことを切に望む。