道長ものがたり 山本 淳子(やまもと じゅんこ)著
大河ドラマ「光る君へ」をより深く見たいと読み始めた。これまで藤原道長が一人の人間として語られることはなかったと思うが、この本で道長について知ってみると、ぜひ道長を主人公としたドラマを作って欲しいと期待する。
此の世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたる事も 無しと思へば(この世は私のものだと思うぞ。満月の欠けたところもないと思うと)
今年の大河ドラマで道長が主な登場人物となり、有名なこの歌も脚光を浴びるようになった。
著者は2018年8月号の「国語国文」に「藤原道長の和歌「この世をば」新釈の試み」を発表している。
「今夜は心ゆくまで楽しいと思う。空の月は欠けているが。私の月ーー妃となった娘たちと宴席の皆と交わした盃ーーは欠けていないだから」といった意味で”エラソー”な歌ではなかったようだ。
道長は燦然と輝いた生涯を送ったのであるが呪詛や妬みを常に恐れ、病等も抱え決して華やかばかりの生涯ではなかったようだ。表があれば裏もあり興味深い平安の世の権力者の姿を知ることができた。