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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

妻が椎茸だったころ 中島 京子(なかじま きょうこ)著

 著者の作品は何冊か読んだのであるが、これまで読んだものと趣向が変わっている。この小説は五つの偏愛短編集であり、泉鏡花賞を受賞している。

 泰平は妻との死別後、妻が申し込んでいた人気料理教室に参加することになった。椎茸の甘煮を作って持参せねばならぬが、妻の死後仕方なく料理を始めたばかりの泰平は干し椎茸の戻し方を習得していない。甘煮を作り上げるまでの格闘が目の前に繰り広げられていく。そして料理教室の杉山女史が「ジュンサイだった記憶」の描写ではあのプルプル、ヌメヌメしたジュンサイが目の前に大きく浮き上がってくるようだ。

 その他四篇もあり得ないだろうという世界が広がり、ストンと腑に落ちていくような不思議な世界に誘われた。