グレゴワールと老書店主 マルク・ロジェ著/ 藤田真利子訳
海外の殺人事件の絡まない推理小説が読みたくなり、ネットで検索していてこの本に辿り着いた。東京創元社発行なので推理小説だと信じて疑わなかったが、読み始めて「何か違う、これは一体どこの国を舞台にしているのか」等々疑問が次々に湧いてくるばかり。これは翻訳が作品に合っていないのかも知れない、などの感想を持ちながらなんとか最後まで読み終えて肩の荷が降りた感じだ。誰に頼まれたわけでもないので放棄する方法もあったのだが。
面白かった、とお勧めはしないのだが、調べれば調べるほど不思議な出会いだ。日本に紹介されている著者の作品はこの本だけであった。また紹介されている「リーヴル・エブト大賞」がどんな賞なのかもわからない。マリ共和国で生まれているのだがこの国は現在も正常不安定である。著者はどこで執筆しこの小説を日本で発表する事になったのか。
”訳者あとがき”に「人生の始まりに立った若者と人生の終わりを迎える老人の友情が美しく描かれている」と書かれているのだが、私は美しく描かれているとの感想は持てなかった。老書店主を「本屋のじいさん」と訳しているがこの呼び方がしっくりこない。
フランスの老人ホームでの様子が描かれているが死が近づいている老人の居場所は世界どこでも共通していることを感じた。