相続地獄 森永卓郎(もりなが たくろう)著
2011年に筆者が体験した相続地獄の一部始終が綴られている。先日読んだ新聞記事によると、2024年3月から被相続人(亡くなった人)などの戸籍情報について請求先が複数ある場合は最寄りの役場でまとめて取得できるようだ。また、個人の財産を一括して紹介できる制度は預貯金では25年3月末を目処に、不動産では26年2月に始まる予定だそうだ。相続地獄は随分緩和されるようでありがたい。
私は両親と同居するようになり、親の財産情報が見えてくるようになったが、離れて暮らしている場合、かなりの困難が伴うと想像できる。同居して父親の介護をしていた筆者でさえほとんど把握できていなかったようである。お金に関することだから情報を聞き出すのは躊躇われるが、結局困るのは後始末をしなければいけない相続人である。時間との勝負に負けるわけにはいかない。
筆者の精力的というのか身体を壊すことが想像できるようなとんでもない無理を重ね、稼ぎ続けたことには驚くばかりだ。この本は2020年の出版だが、将来は明るかった筆者は2023年ドン底に転がっていくことになる。存命期間数ヶ月の宣告を受けたのだ。その後の筆者の足掻きぶりは素晴らしい。私設博物館「B宝館」を作って大赤字になっているので相続税はかからないようだが、亡くなるまでにどれだけの本を執筆するのだろうか。真実とは思えないような「本当の話」も書いているようだが。数ヶ月の命、と宣告されながら生に執着が強ければ宣告以上に生きられる、そんな見本になってほしい。