僕と先生 坂木 司(さかき つかさ)著
著者の作品を読み始めたのは「和菓子のアン」からである。日本推理作家協会会員、本格ミステリ作家クラブ会員であり、作品もミステリ要素は含みながら、「怖い」作品はない。(私の知る限りでは)私自身ミステリは嫌いではないが「怖さ」を感じるものは極力読まないようにしている。主人公の伊藤二葉と同じだなぁ、と仲間意識を感じてしまった。
作品は五話から成り立っており、発表されたのは2009年から2013年だ。第四話「ないだけじゃない」の中で”青春。大学生。夏休み。要約すると、若さと暇はあるが金がない”という文章がある。こういう本当に呑気な時間を私も過ごしていた、と数十年前の学生時代が懐かしくなってしまった。現代のかなりギスギスした学生時代ではなくてよかったと心の底から思ってしまう。
小説にはミステリ作家名やミステリ作品名も出てくるが、玄人好みの尖ったものでなくて嬉しい。肩の力を抜いて読むことができた。