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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

墨のゆらめき 三浦しをん著

 書道関連の雑誌を眺めていたら、この小説が紹介されていた。

 著者は「舟を編む」では編集者たちが辞書の世界に没頭していく姿を、「仏果を得ず」では若手義太夫が誠実に人形浄瑠璃に取り組む姿を描いたりとちょっと変わった職業小説を書いている。そういった職業があることを知らなかった私にはそれらがとても面白く、現在も興味は尽きない。

 書道をテーマとした小説はこれまで読んだことはなく期待して読み進んだ。できれば続編を望むのだが多分書かれることはないだろう。遠田が画仙紙に漢詩を書く描写が良い。書家が全身と全神経を駆使し集中して作品を完成させる姿が見えてくる。もう40年以上も前のことだが、私は書家の元で書道を習っていた。その時の師の姿を思い出し、自身も同様に半紙に向かっていた時の記憶が蘇ってきた。今では大きな字を書く空間も体力も無くなっているが、せめてペン字くらいは復活させたくなった。