
人魚が逃げた 青山 美智子(あおやま みちこ)著
銀座の歩行者天国は1970年から始まり現在に至っている。1979年に上京し、東京近郊で暮らしていた私は銀座の歩行者天国に幾度か足を運んだ。小説に出てくるお店は懐かしく今もまだ存在している老舗は多い。その中の「あんぱんの銀座木村屋總本店」で、中央に桜の塩漬けが埋め込まれている商品を私も選んだ。数十年も前ではあったが当時も贅沢な値段であった。
銀座を舞台にした物語であるから、明らかに作り話に思える「王子」が現れても不思議ではなく読めてしまう。それぞれの章が独立したもののように思えたが最後に見事に回収されていった。五人の男女の「人生の節目」は予想を超えて鮮やかに次のステップに踏み出していくのが想像できる。
よく知っていたはずの「人魚姫」だったが、覚えていた部分が案外少なかったのには驚いた。幼少期に絵本や童話に触れる機会が少なかったのかもしれない。