
オケ老人 荒木 源(あらき げん)著
単行本の装画が随分凝っている。オーケストラを主題にした小説らしい凝りかたで好感が持てる。
マトリョーシカ人形のように入子になったロシアスパイ登場場面に最初戸惑ったものの、少しハラハラドキドキと読み進んでいく。
第三楽章の中のアリョーシャの会話「私は日本が大嫌いだ。生き物同士、殺し合うのが当たり前だってことを忘れてしまってるからさ。だからあの国の人間はもう生き物じゃないんだ。息をしながら腐っちまってるんだ。」近年、日本国の低下を嘆く言葉が多くの人の口の端に上るようになった。こんな風な自虐的表現を通して日本よ再び!の作者の強い思いが隠されているように思う。
大円団でのフイナーレを迎える。中島先生と坂下先生との関係は大きく予想を外れてしまうのだが。ロシアスパイのアリョーシャは最後まで怪しい存在であり続けたのだが、梅響コンサートでの任務遂行失敗後、スパイ生活と縁を切りモスクワの音楽事務所で働いている。
音楽をテーマとした小説がまた読みたい。読んでるうちに苦手なクラシック音楽を理解できるような気さえしてくるのであった。