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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

いつでも母と 山口 恵以子(やまぐち えいこ)著

 作者は丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら小説を執筆。49歳で作家デビュー。食堂勤務をしていたことから「食堂のおばちゃんが受賞した」と話題になった。

 最愛の母を自宅で看取った後悔と母との幸せな思い出が描かれている。2019年に母を看とった翌日から文章は書かれている。24時間体制で親を介護した経験のある人なら大半が我が身に起こったこととして同感しながら読み進めると思う。そして全くその通りと大きくうなづく描写も多い。

 在宅介護は可能だと聞いてはいるが、介護保険でこれほど手厚い介護が受けられるかと思うと「ありがたい」の一言である。ただこれから介護される側が圧倒的に増えてくるのだから自分自身の介護時にはかなり悲惨の状況になっているのかもしれない。

 同居している兄は脳梗塞を発症していて介護も思うように任せず、作者の肩に全てがのしかかっている状態が続いていた。時折母の介護に疲れ兄に暴言を吐きそうになるのをずっと堪え心の中で叫びながら、「なんで私が」の場面では同感する読者も多いことだろう。

 本当にお疲れ様だったことだが、こうして母との癒着60年を思い出しながら記録を残すことができてよかったなぁと思っている。きっとお母様も成仏されただろうし、作者自身も思い残すことのない介護を終えることができたのだろう。