
下に見る人 酒井 順子(さかい じゅんこ)著
「本の旅人」(1995〜2019)に連載されていたものに加筆修正し2012年発行。
”ブス”に書かれている「木嶋佳苗」を読んで「この名の犯罪者がいたなぁ、筆者の示す通りなんでこんな女に何人もの男は騙されたのか?」当時私も大きな疑問を抱いていた。そして同時期に鳥取でも同様な事件が起こっている。この時の犯人は「上田美由紀」。当時は大きな話題になっていたのにすっかり忘れていた。上田美由紀は2023年に獄中死している。一方、木嶋は死刑囚として東京拘置所に収監されているようだ。
本の内容に戻ろう。木嶋が話題になったのは「ブスだから」「ブスなのに、まるで美人がするような犯罪をしでかした」というところである、の記述に同調してしまった。
酒井順子のすごいのは、大多数の人が表に出せないイラっとしたものをサラリとそれも的確に文章にしてしまうことだ。「いやいや私はこんなことは思っていません、もし思っていたとしても口が裂けても言えません」の心の声を文章としてしまう、膝を打って「まさしくその通り」と喝采をあげたくなるほどの見事なものである。
果たしてこの本を薦めて良いのかどうか、自身の下種な部分が表れるようでちょっと怖い。