
学芸員が教える日本美術が楽しくなる話 ちいさな美術館の学芸員著
「学芸員しか知らない、美術館が楽しくなる話」を書いた著者の日本美術編である。私の好きな「工芸」について詳しく書かれていないのは残念だ。日本美術のジャンルに「工芸」があり、西洋美術では工芸はランクが下がる応用芸術とみなされるが、日本美術ではその点が大きく異なるという。第三弾として「工芸」に特化した著作が生まれることを期待したい。
著述にもあるが、私たちが身につけている美の基準は、そのほとんどが西洋美術をもとに成り立っている。江戸時代に入るまでヨーロッパの影響を受ける事なく主に中国から技術や表現方法を学びながら島国ならではの独自性を維持して発展してきたのが日本美術である。
私も長い間日本美術から遠ざかっていた。国立近代美術館にはよく通ったが、充実した日本美術コーナー(特に日本画)を避けて西洋絵画に没頭していた。歳をとるにつれ日本美術に惹かれ始めているが如何せん知識が無さすぎる。そんな私に日本美術の面白さの基礎を教えてくれた著作であった。