
赤毛のアン L・M・モンゴメリ著 松本侑子、村岡花子訳
劇団四季の「赤毛のアン」を観た。遥か昔に赤毛のアンを読んだ記憶はあったけれど、一体どんな内容だったのかよく覚えていなかった。再び読んでみようと思い立ち、当時まだ発刊されていなかった松本侑子訳の「赤毛のアン」を読み始めた。読みにくいことに驚いた。当時読んだ時はサクサクと読めたはずなのに。
村岡花子訳の「赤毛のアン」を探したところ、一般図書にはなく、子ども向け図書に分別されていた。本を開いてみて納得した。多分私が当時読んだのは村岡花子訳の少女小説として出版されたものであったのだ。
文庫版松本侑子訳の「訳者あとがき」に「アン」は簡単でやさしい英文で書かれているのではなく、難解で古風な表現が多用されており、また原文は子どもむけではなく、ヴィクトリア朝の大人むけの文体である、と記されている。そして松本訳には英米文学からの多数の引用の解説も掲載されている。
児童文学書として認識していた内容がずいぶん格調高く大人向けの小説に変わっていた。原書を読んで松本は「アン」の本当の姿を知ったようである。原書をこの先も読めそうにない私は松本訳のおかげでモンゴメリの真実を知ることができた。
「訳者あとがき」にはモンゴメリの生涯についても詳しく記されている。「赤毛のアン」は作者の頭の中の物語ではなくモンゴメリ自身の体験や当時のカナダの社会生活についても詳しく書かれている。
私の幼少期の記憶を再び、のつもりで読み始めたものであったが、多くの収穫を得ることができた。