
ホテル・ピーベリー 近藤 史恵(こんどう ふみえ)著
ハワイ島へはまだ一度しか行ったことがないが、書き出しから「これはハワイ島が舞台だ」と20年近く前のハワイ島を思い出していた。
「屋根もない売店やレストランらしきものがあるだけで、空港と呼ぶのにはあまりにも貧相だ」とハワイ空港の様子が描かれているが、私は薄ぼんやりと残っているあの光景を思い出すと心がのびやかになる。空港とは思えないが開放感がこの上なくあった。再びハワイ島へ出かけられるだろうか。
著者の作品はこれまで何冊か読んだことがあった。スイーツが題材になった小説を主に読んでいたこともあり、今回の作品は私にとって異質なものだった。小学校の教師だったという木崎の暗い過去を予想させ、半ば以降に事件が起き始める。蒲生の死、青柳の死と重苦しくなり始める。この作品は推理小説だった、と思わせる展開が続く。木崎の過去は昨今の小学校教諭の女児盗撮事件等を思い起こさせたりする。作品は2010年に書かれたというのに。
第七章で物語はこれまでの出来事、人物を回収していく。推理小説らしく辻褄合わせしていくのだなぁ。私はハワイ島の気候や街の様子をもう少し詰め込んで欲しかった。