ファーブルと日本人 養老 孟司(ようろう たけし)、奥本 大三郎(おくもと だいざぶろう)著
私の全く知らなかったファーブルを知ることになった。養老孟司と奥本大三郎というこれまた二人の変人の著作であるのだから当然のことかもしれない。「ファーブル昆虫記」は日本ではとてもよく知られているが、本国フランスでは昆虫観察は盛んではなく、日本人ほどファーブルに親しみを持っていないようである。
ファーブルについて書かれた本というよりも養老と奥本の現代日本社会の批判が主である。彼らは長年昆虫観察を続け、自然もよく観察しているので虫が自然界で激減している事を肌で感じているようだ。文章を読んでいて確かにその観察は正しいことが私にもわかるようになった。父が無農薬で農作物を栽培していて、持ち帰る野菜の状態とスーパーに並んでいる形の揃った綺麗な野菜の違いを知ったためでもある。何度も農薬が撒かれているスーパーの野菜を食べて死に至る事はないけれど、土も虫も不潔な物と扱はれることに首を傾げてしまう。
私は昆虫は得意ではなかったし、今でもそれは変わらない。しかし、数年前から園芸を始め土をいじるようになり、以前ほど虫が苦手でもなくなったのだから不思議である。ゴキブリをたまに見つけると大騒動ではあるのだけれど。
南海トラフ巨大地震や首都直下型地震等の想定外の災害が起こる確率は年々高まっている。スマホ、AIに頼り続けている私たちはサバイバルを体験していない。便利な生活に慣れすぎている怖さを近年感じるようになった。幸い都会からも離れ土にも慣れ親しみ始めた私は老いからは逃れられないが、不便な暮らしもできそうである。