あなたの人生、片づけます　垣谷 美雨（かきや みう）著

　四篇の短編集である。「片づけられない」は色々な意味で使われる。私は持ち物を片づけられないという面で読み進んでいった。ケース3「豪商の館」は数年前に私が実家で体験した状況と似ていた。多分日本の戦前生まれの高齢者に共通する思考なのかもしれない。「いつか」のために大量の品物を予備として保管している。骨董屋、リサイクルショップ等に私も鑑定を頼んだ。こんなに大量にあるのに引き取ってもらえたのは数点あまり。我が家にはお宝はなかった。本に書かれていた通りの対応を経験した。

　その後、私は物を購入するのに腰が引けてしまった。この先何年生きるのだろう。この商品を購入して処分は面倒にならないだろうか、逡巡してようやく物を購入するようになった。

　ここ数年片付けに関する書籍を読む事が多い。終活するつもりもないのだが、定年後に使わなくなった品々の多さに驚くばかりだ。厳選して残しているものの多分不用品となってしまうのだろう。どこで見切りをつければ良いのだろう。不用品は使わない部屋に置かれたまま存在さえ忘れてしまう。どのタイミングで処分を考えていくか悩ましい。