
青い壺 有吉佐和子(ありよし さわこ)著
この小説は絶版になっていたのだが2011年に復刊以来現在まで売れ続けており、この本も28刷である。13の短編で構成されている。50年近く前に書かれたものなので少し鄙びた感じはあるのだが人の考え方、生き方は大きく変わっていない。
第二話の定年退職した夫に関した話は現代もアルアルなのではないか。終日家でゴロゴロ過ごし、何もしない、何もできない。行く場所もなく、することもなく働いていた職場に挨拶に行ったはずがルーチン作業のように辞める前と同じように職場で過ごしてしまう。まるでホラーのようだが、ずいぶん昔私も職場でそんな経験をした。最初は職場の誰もが相手にしていたが、訪問回数が増えるにつれ無視するようになり、その姿を見ることもなくなった。定年後の男性を「濡れ落ち葉」と称していたが現在もその言葉は健在らしい。