
オリーブの実るころ 中島 京子(なかじま きょうこ)著
六篇の短編から構成されている。
どの作品も淡々と物語は進むのだがどれも意表をつく内容である。特に「ガリップ」はちょっと怖い。にも関わらず恐怖小説にはならず、ガリップに敵対心あるいは恐怖を感じても良さそうなのに陽子は優しい。優しいというのか陽子は肉親との関係が薄く人間関係も淡白だからガリップと共に暮らせたのかもしれない。「水田蘭の妻はもう少ししたら、それもはっきりするだろう」と陽子は亡くなってしまう。私はガリップが最終的に妻の座を射止めたのだと思っている。
「家猫」では40歳を迎えた息子への母の思いから始まる。幾つになっても親にとっては子どもであり続けるのだろうがなんだか鬱陶しい。塔子は15年前の離婚を記憶の奥に封印していたが友人の離婚で封印を解くことになってしまった。二度目の結婚は幸せそうなので再び思い出すこともないだろう。母、息子、元妻と三者三様に互いの行為に対しての見解が違うのは、「なるほどそうだったのか」だから2年の短い期間で別れることになってしまったのだなぁ。息子のマンションい居着いてしまった家猫はこのまま家族として居残り続けそうだ。