
木漏れ日に泳ぐ魚 恩田 睦(おんだ りく)著
文庫本裏に書かれた本のあらすじに惹かれ購読を決めた。文庫本の最後に掲載されている「解説」を先に読んでしまうのが常であり、今回も同様に読み始めたものの「小説の方を読んでからこの文章に入ってください」との助言。解説を読み進まず小説を読み始めた。解説者が書いているように面白い。
登場人物二人の心理劇だ。章が進むたびに新しい事実が展開されていく。男の死に彼らがどれほど関わったのか、あくまで推測しか書かれていないのだがさもありなん、の顛末である。そして二人の関係は若い夫婦のように描かれていたのに、本当の関係がだんだん露わになっていく。そんな男女の関係もありなのかと次々驚かされる。
恋愛感情が終わっていく過程がうまく描かれていて私も感情移入し過ぎてしまった。アキの憑き物が落ちていくような心の変化をゾクゾクと感じるのだった。