ダークネス 桐野夏生(きりの なつお)著
2022年1月〜2025年1月「小説新潮」に掲載された。この小説は2002年に発表された「ダーク」の続編である。著者のデビュー作「顔に降りかかる雨」(1993年)で村野ミロが誕生し、私は当時ミロのファンとなりその後ミロが活躍する小説を何作か読んだのだが「ダーク」を読んでいないことにこの小説を読み始めて気づいた。ダークを読んでいなくても独立した物語として楽しめるのであるが、当時ほどのめり込むことができなかった。息子「ハルオ(治夫)」がつまらないのだ。20歳と言うのはそんな歳なのかもしれないが。頭は良いのだが無謀すぎるのだ。人生甘くみ過ぎていると思ってしまう。多分私自身年齢を重ねた故の感想だろう。私自身の当時の幼さを棚に上げていることは重々承知しているし、これはハードボイルド小説として読み通せば良いだけなのだ。
執筆されたのが近年であるから小説では「LINE」が通信手段となってしまうのだろうが、スマホとLINEで日常生活が完結してしまうことにつまらなさを感じてしまった。スマホを上手く使いきれないと生活が円滑に回らない。
多くの読書感想が「さすが桐野!」と称賛するのだが74歳の彼女にはもう胸震わせるハードボイルド小説は書けないのではないか。続編があることを想像させる終わり方だが果たして彼女に書く力が残っているだろうか。

