星を掬う 町田そのこ著
一度読み続けることに挫折した。主人公の境遇があまりにも悲惨すぎて読むのが苦しくなった。
本の返却が迫っていてどうしようかと持て余し気味で、かなり終盤から読み始めたら急に途中になった箇所から読みたくなりその夜読破してしまった。一気呵成に読み通せる物語であった。
話の先を求めてとにかく前に進んでいったが、現代社会が抱える問題点が多数散りばめられていた。なんて生きにくい世の中になってしまっているのか。私まで物語の中で息ができなくなる。暴力から抜ける事は容易ではない。主人公は夫の暴力から抜けられないまま離婚後も執拗に居場所を探されお金を要求されそれに応え続け、もう最後かもしれない崖っぷちまで自分を追い詰めて。
そんな時に自分を棄てた母に会った。母と別れる直前の夏休みの思い出を綴った文章をラジオに投稿していたのが発端であった。再会した母は若年性認知症で主人公を優しく迎えたわけではなく、それぞれ訳ある同居する女性たちに暮らしを支えられていた。
母に棄てられたと思う主人公の千鶴、娘を置いて婚家を出ていかなくてはいけなかった彩子。両親が亡くなり親戚の家で歪んだ生活を余儀なくされていた恵真、17歳で妊娠して男に捨てられた彩子の娘の美保。絡み合って暮らす中で日常を取り戻していく主人公だが、元夫がストーカーのように自分を探し出し、再び暴力に見舞われる千鶴。娘を助けるため認知症の症状が重くなってきた母が元夫の弥一と戦う。母は認知症を悪化させたものの千鶴は弥一から逃れることができた。
千鶴だけではなくどの登場人物も抱える大きな苦しみがあったのであるが、希望の見える結末となったことに安堵する。