厨房から台所へ タサン志麻著
”志麻さんの思い出レシピ31”の副題がついていてレシピも紹介されているが、このレシピにはあまり興味を惹かれなかった。私が肉料理を好まないことと少々作り方が本格的で時間がかかりそうなのが理由だ。彼女は辻調理師専門学校もフランス分校も卒業しているのだから信頼できる料理人であろう。卒業後は日本のフランス料理店で15年働き、その後フリーランスの家政婦として働き「予約が取れない伝説の家政婦」と呼ばれるようになり、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で話題になっている。
彼女のフランスに対する情熱の半端なさに惹かれる。普通と言われることからかけ離れた暮らし、考えであるから日本でも成功を収めたのであろうと思う。彼女はまだ若い。この先日本社会でどのように活躍し、根を張っていくのか興味が尽きない。
私は日本で活躍するフランス料理のシェフのフランス修行時代等の話を読むのが好きだ。日本で呑気に暮らしていては手に入れることができない達成感を本を読むことで体得できる。彼らが異国で経験したのは闘争心ではないか、一流になりたい、その分野で頂点に立ちたいといった心の奥から沸々と湧いてくる闘争心だと思う。それは日本人の中では浮いてしまうだろうほどの異色さを放っている。
きっと一緒に仕事をすれば嫌な女に違いない。”私”を主張して妥協なく自身の目標に向かっていて周囲は見えていないだろう。そんな妥協のなさが長く勤めたフランス料理店を逃げ出した理由だったのかもしれない。徹底的に自分を追い詰めてしまう彼女に怖さを覚えるが、だからこその今の仕事なのであろう。
挿入されているフランスの市場の様子、チーズの話等々は面白い。日本と大きく違う食べ物事情を知ることができる。