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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

アメリカ分断の淵をゆく  國枝すみれ著

 今年7月に出版された本だ。アメリカ暮らしが長いためか、それとも文章が上手くないのか、毎日新聞特派員ではあるが読みにくい文章である。そしてトピックスが10もある。数を減らしてもう少し切り込んでまとめた方が良いのではないか。問題を抱えたアメリカのあれやこれやなんでも詰め込んでしまいました、といった風で消化不良を起こしそうだ。

 私たち日本人が理解していない、そして日本では話題になっていなかったことも描かれていた。第6章「反骨の記者の リメンバー・パールハーバー」ではアメリカが日本に落とした原爆についての記述、ならびに戦時中の日本兵がとったアメリカ人捕虜に対しての残酷さが書かれている。捕虜になったアメリカ兵の33%(40%とも言われる)が死亡している。ドイツのナチスでのアメリカ兵捕虜は死亡率1%と言われているのに、だ。第8章「死の灰にまみれたアメリカ人」はネバダ砂漠やマーシャル諸島で繰り返された核実験の杜撰な実態等、目を覆いたくなるような記述も多い。原爆を落とされた日本だけが核の悲劇の中心ではないことを知らされる。

世界はこの先どうなっていくのだろう。アメリカの中間選挙は終わったが、分断が一層はっきりし、溝が深まりそうな勢いだ。地に潜っていた差別も収まらないまま再び大手を振っているようにも感じられる。人間の愚かさを見せつけられてしまった。