花競べ(はなくらべ) 朝井まかて著
2008年小説現代長編新人奨励賞受賞作品「実さえ花さえ」に加筆、改題されたものである。デビュー作というのにこのレベルの高さは、と驚かされる。4月から放映される朝ドラの主人公牧野富太郎の波乱の生涯を描いた「ボタニカ」は昨年発行されている。
「花競べ」は江戸市井の春夏秋冬を描いた職人小説との説明がある。主人公「新次」の職業は花師。花師とは木や草花を栽培し、種から育てたり、挿芽、挿木、接木、品種改良等を行う職人のことであり、現代であればナーセリーとよばれる職業だという。
私は近年ガーデニングに興味があり、写真本ばかり眺めている。この小説を読んで江戸時代にも花木の栽培が盛んであったことがわかり興味深い内容であった。勿論、花木を軸にした職業小説、人情小説の完成度が高いためでもある。
デビュー後の受賞歴が素晴らしい。2018年に数々の名作を出版した功績を称えられ、大阪文化賞も受賞している。