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BOOK CAFE LAGOM

680-0824
鳥取市行徳3-757

本の紹介

トヨトミの野望 梶山三郎(かじやま さぶろう)著

 経済記者、覆面作家の書いた”巨大自動車企業”のお話である。すべてフィクションである、と注釈はあるものの、ほぼ真実に近いと言われている。該当しそうな人を想像しながら読むのも面白い。これまで穏やかな経営者と見ていたが大企業の社長ともなれば”穏やか”に経営ができるわけはないのである。

 サラリーマン社長とはいえ4年間の社長業では全然時間が不足し改革も思うように進まないとは。雌伏十年以上に渡り耐えに耐え、明らかな左遷人事でありながらも屈服することなく大企業の中でよくぞこれほどの力が出せたものだ、と感服するばかりだ。

 私は愛知県に暮らしていた頃に、小説のモデルであろうこの企業の持つ幾つかの私設記念館を見学したことがある。どれも物作りの面白さが全面に出ていて楽しい歴史の勉強のできる記念館であった。特に国内外の自動車が並べられている博物館は楽しい。自動車の進化が見て取れ、現代の車の装飾のなさがつまらなかった。もちろん性能は現代車の方が遥かによいのであるが。

 ロビィストを使って駆け引きする場面ではドキドキさせられる。小説であれば作り事と思って読んでいられるが、ほぼ実話なら世界の企業とこんなヒリヒリするような場面が日常茶飯事なのか、とスケールの大きさに圧倒される。小さな社会しか知らなかった職業人だったなぁ、と我が身を振り返っている。