ギャラリスト 里見 蘭 (さとみ らん)著
掲載されている参考文献の多さに驚いた。多数の文献に目を通して挑んだ作品であることがよくわかる。取り上げられた内容は興味深い。本の帯にも書かれているが芸術性経済小説でもある。
章がカタカナ表記である。これがわかりにくい。日本語に馴染んだ言葉もあるが、章立てにされた内容を想像することを阻んでいるようにも感じる。小説の内容と同様に読者を尻込みさせてしまうのではないか。
日本では芸術の裾野が狭いので小説に書かれているような裏側が多分存在しているのだろう。作家が著名になりお金がそこに集まるというのは、作家に実力があれば自然にそうなるのだろうと単純に考えていたが絵の売買には画商が関わってこそ。そこで留まって表には出ていかない作品もあるのかもしれない。
後半に入りストーリーの勢いが薄れていき、終章は消化不良になってしまった。復讐手段として著名画家とそれに関わっていた画商が消滅に至ったのだが、ファンドマネージャーの江波志帆の終盤の描き方が粗いのは残念だ。