師匠はつらいよ 杉本 昌隆(すぎもと まさたか)著
著者は棋士藤井聡太の師である。「週刊文春」2021年4月〜2023年4月まで掲載された100回分をまとめたものである。
藤井聡太に関するネタばかりではなく、将棋界のユーモラスな出来事等、将棋を知らない私も十分楽しむことができた。字数が決められているので当然だが、どの週も時流に相応しい内容がコンパクトにまとめられ、週刊誌の読み物としては秀逸である。
第54回「パソコンショップでの攻防」は面白い。棋士の仕事道具は将棋盤と駒だが現代はそれに加えて研究用のパソコンが欠かせないものとなっているという。ディーププラーニング系のパソコンを起動させるためには高性能のパソコンが必要で、これがかなりの値段になるという。弟子の藤井竜王にアドバイスをもらい、パソコンショップでの店員とのやり取りが興味深い。
天才弟子を持つ師匠の辛さを何とも軽やかに書いているのが良い。